『坂口安吾の旅』

安吾忌でお会いした若月忠信さんの著書『坂口安吾の旅』が届いた。安吾が秋田を訪れた時のことが書いてあるので、以下引用。

「秋田の印象はいかがですか」と着くやいなや新聞記者に聞かれた安吾は「秋田はいい町だよ。美しいや」と答えながら心の中でこんなふうにつぶやいた。
「私は秋田を悪く言うことができないのです。なぜなら、むかし私が好きだった一人の婦人が、ここで生まれた人だったから。(中略)汽車が横手市を通る時には、窓から吹きこむ風すらも、むさぼるばかりに、なつかしかった。風の中に私がとけてしまってもフシギではなかったのです」(「秋田犬訪問記」昭和26年)

太宰と安吾、作家としてでなく男として見た時に、安吾の方がいい男だったと私は思うなあ。