『戦争と平和 愛のメッセージ』 美輪明宏

戦争と平和 愛のメッセージ

戦争とは、あなたの愛するひとが 死ぬ ということです。

戦争の正体
今日、あなたが家に帰ると、明日から、お父さんがいなくなる、わが子がいなくなる、ボーイフレンドがいなくなることになっていました。死を約束された旅に出るのです。もう二度と会えなくなるのです。
さぁ、どうしますか?
あなたの大切な人に、そんなことが起きたら、どう思いますか?
若い人たちも、考えてみてください。
明日から義務として教練を受けて、命令を聞かなかったら鬼軍曹にぶん殴られる、蹴とばされる。合コンもなければ、好きな音楽だってろくに聞けない。
信じられないでしょうけれど、戦争のときには、実際、そうなるんです。
戦争体験を持たない人たちは、のんびりとかまえてしまっているんですね。
でも、一度、自分の愛する人がいなくなるということはどういうことなのか、自分が戦争に行くということはどういうことなのか、じっくりと考えてみてください。

私は戦争を体験しています。そして、たくさんの悲劇を見てきました。(略)
戦争中には、とんでもない人間が権力を握り、命が簡単におびやかされます。(略)
戦争中は、理不尽で悲惨なことばかりでした。それが戦争です。
今、またそれを始めようとする悪魔が迫っています。
みんな戦争の正体を知らなさすぎます。

やがて憲法が作られました。
新しい憲法でとにかくよかったのは、「戦争を放棄します」ということです。
これを聞いて、私は少年でしたが、ほんとうに跳びあがるほど嬉しく思いました。もう逃げ惑う必要がないんだと。(中略)
こんなに長いあいだ日本が戦争に引きずりこまれることなくこられたのは、日本始まって以来、世界始まって以来のことです。それは憲法に守られてきたからです。
正義の戦争なんてありゃせんのですよ。

アメリカ大統領ブッシュは、軍事物資を一手に引き受けているカーライル・グループと深い関係がある。大統領ブッシュとその父親は、カーライル社の重役で、父親のブッシュは、カーライルのセールスマンとして世界中を飛び回っている。「だから息子のブッシュも、とにかく戦争を起こさないとならない」。兵隊や家族、なにもかも入れて、アメリカでは小国の人口ぐらいの人数が軍需産業で食べているという。

アメリカの大統領が来日するたびに、日本の首相は一歩ずつ軍事主義に近づいていきます。
今、日本で憲法改定が進められていることについて、アメリカは「それはおたくの国の問題だから」というような顔をしているけれど、裏では、「改正しろ、改正しろ」と言っているはずです。
その真意は、早く憲法を改定して、正々堂々と国民の税金で我々の商品を買ってくれということです。(略)
実際に戦争を起こしているのは財界の連中なのです。自分たちが儲かるためには、人が何十万、何百万死のうが、平気な人たちです。(略)
そういう政治家を支持しているのは国民です。だから誰が悪いわけでもない、国民が一番悪いのです。
日本の国民は、自分たちで政治家を選んでおいて、文句ばかり言っています。その矛盾に気がついていないのです。日本人は、もう少し政治意識を持たなくてはいけません。
どこの党でもいいから、一度、ほかの党に下駄を預けて、今の政府を戒めたらよいのです。お灸をすえなくてはいけません。
政治家に、真面目にやらなくてはいけない、世の中をなめていたらドエラいことになるということを、思い知らせる必要があります。

今、私が一番言いたいのは、自分たちは加害者の一人でもあるということです。
自民党を支持していること、それから、アメリカを崇拝して、アメリカ文化一辺倒であるということは、とりもなおさず戦争支持者だということなのね。
極論じゃないんです。イラク戦争でも、毎日たくさんのイラク人が亡くなった。アメリカ人も亡くなった。家族を亡くした人の様子が報道されても、まったく関係ないと思っている日本人が多いけれど、関係ないわけないのです。
日本はアメリカに加担して、殺しているわけです。なんにも自分たちに関係はないと思っても、世界の出来事はみんなつながっています。
これから、保険から税金から、すべて値上がりするでしょう。全部自分たちにつけがまわってくるんです。政府の下支えをしているのは、自分たちなんですから。
日本も軍隊を認めるようになったら、とりもなおさず戦争に行かなきゃいけないということですよね。
「軍隊を持て、軍隊を持て」と言われる裏には、必ず誰か、それで儲けている人がいるはずです。そういう人たちにとって、人間は消耗品にすぎないんですよ。何人死のうが、何百人死のうが、関係ない。大義名分はタテマエ。戦争は経済で行なわれるんです。
だから、「次は徴兵制度でしょ」と、私は言うんです。

もう一度、考えてみてください。
明日、自分が、
あなたの大切な人が、
戦争に行くことになったら、
どうしますか?