奥山さんの講演会

2月に奥山さんの講演会があった。参加費5000円は少し高いような気もしたが、奥山さんに会いたい気持ちが強くて行くことにした。会場に着くと入り口の所で、奥山さんが笑いながら話していた。HPでNYへ行ったときの写真を見て、多分この人なんだろうなと思って、見ていたからわかった。白のジンズをはいた足がとても細かった。会場に入ってからも話し声が聞こえてきた。おそらくは友達に「質問とかしてよ」と言っているのが聞こえた。

紹介されて奥山さんが会場に入って来た。ゆったりした笑顔だった。(後から日記に、かっこよく登場したいのに、と書いてあったが、十分かっこよかったなあ) 講演の担当者の一人が妊娠中(おそらくは臨月)で、もう一人が先日結婚したという話題になり、いいですねえ、私にはそんなことはもうないって感じですよねえ、と笑いながら話し始めた。少し高めで柔らかい感じの、弾んだような声。

DJの真似事をしていた、と話の途中にあり、そんな感じのマイクの持ち方だなと思った。話を聞きながら、たくさん遊んできた人なんだろうなーって思った。病気になる前から、元々とっても幸せな人だったんだなって。にこやかに話しながら、いろいろな冗談も混じり、皆でたくさん笑わせてもらった。

ガンという病気なのだから、当然座りながら話すだろうと思っていた。椅子がそこにあるのに、彼はずっと座らなかった。またそれがとても彼らしい気がした。途中何度か咳き込んだ。それだけが病気を思わせるリアルな瞬間だった。30秒休ませてもらえますか、と話して水を飲み、そしてまたにこやかに話はじめる。辛いなんて言わない。苦しいなんて言わない。ずっと楽しいままの講演会だった。

奥山さんが会場を出る時、私のすぐ横を通って行った。その時にふっと風が私にとどいた。それは彼が生きて動いているときの風、生きて会うことができたときの風なんだって思った。

講演会の言葉は、文字にして残して欲しいとずっと思っていたから、記録がHPにアップされた時は、とても嬉しかった。読んでいると、彼の声や身振り手振りまで思い出すことができる。最後に自分に届いた風を、ずっと覚えていようと思う。

講演の記録