『デザインと行く』 田中一光

デザインと行く (白水Uブックス―エッセイの小径)
先日、田中一光(たなか いっこう)氏を特集したテレビ番組を見ました。興味を持って早速注文したのがこの本。さっと目を通したものの丁寧に読了していなかったのですが、読んでみると内容が濃く、一度では感想を言い表せない気がします。とりあえず今思い書ける分だけ書くことにします。

彼はグラフィックデザイナーの草分的存在で、無印良品生みの親でもあります。また生涯に渡る仕事量の多さやその作品の一つ一つが優れた芸術性を持つことで高く評価されているということでした。番組では尾形光琳の影響が紹介されていました。

ぼくは西洋の古典から、驚くほど影響を受けていない。受けたとしてもきわめて断片的なものだ。異文化に接触したときに起こる、底のかたい部分に対する本能的な警戒心。ぼくはそれが人一倍強いのかもしれない。

ロココや、バロックのものになると、むしろ生理的に嫌悪感が起こる。血と富と権力の臭いがするからである。美が素直に体内を流れてはゆかない。

デザインは、苦行であってはならない。苦しんだら、どんどん深みにはまって出られなくなってしまう。追いつめられたら、押しつぶされてしまう。鼻歌でも歌いながらやるぐらいがいい。その方が、でき上がりに鮮度がある。

アンチテーゼは、発想に直結する。つまり、見方を変えるためのエネルギーである。ワクの中で、いくら懸命に走っても足が地から離れることはない。人間が正しいと決めたものの裏を正面にすえてみる。快適に対する不便、孝行に対する極道、信頼に対する冗談。こうした罪悪すれすれのネガティブな視点から、発想が生まれる。

アンチテーゼが、発想を生む力になるという考え方は、寺山を考えれば合点します。田中一光氏は、言葉の表現者ではないけど、クリエイターって自分の言葉を持っている人が多いような気がするなぁ。

もちろん精神論だけではない。事業を宣伝、プロデュースする機会の多かった氏は、それらを分析し戦略して作品を作っていく。

知らずに見逃してしまったのですが、こちらで以前の展覧会が紹介されています。
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