赤煉瓦コンサート

「うた、歌、詩」(うた、うた、うた)と題して、今日から3日間、東京駅の赤煉瓦コンサート。今回は、谷川俊太郎さん、小室等さん、谷川賢作さんの三人。この三人の組み合わせは初めてで、とても楽しかった!

小室さんの歌は、静かな中で耳をすませて聴くことが多かったから、ざわついた駅構内(東京駅丸の内北口ドーム)での演奏は、最初少し慣れなかった。谷川俊太郎さんは、音が響くので「教会みたい」と言っていた。赤煉瓦コンサートの音楽監督である池辺晋一郎さんは、以前のコンサートで、雑音の中で聴く音楽もまたいいという話をしていた。

小室さんが以前、ライブハウスで話していた。大きな音で演奏する人が増えているが、私はだんだん小さな音になっていると言われる。それが観客に音を立てないようにと強いているようで申し訳ない。気兼ねなく音をたてていいですからね、と。著書の中でも、静かに聴き続けることが難しい障害者の人が、コンサートに行きにくいというのは、おかしいとも書いていた。あたたかい人だと思う。

最初に小室等さんが、「1ベル、2ベルの代わりとして」演奏してくれた。そして、谷川俊太郎さんと谷川賢作さんが登場。俊太郎さんが、「煉瓦頌」を朗読してくれた。以前、掲示してあった詩を読んで、とてもいいなぁと思っていたので、嬉しかった。

東京ステーションホテルの話題になり、俊太郎さんが、「江藤淳のひいきのホテルだよね」と言っていた。人に勧められて一度泊まったことがあるが、レトロだったと言っていて、最近は、新しくできた「丸ノ内ホテル」によく泊まっているそうだ。「丸ノ内ホテルはいいよね」と小室さんも言っていた。小室さんは、ステーションホテルに泊まったことはないが、ステーションギャラリーには、よく行くと言っていた。

東京駅は、来年から復元工事に入り、大正時代に建築された当時の三階建てになる。東京ステーションホテルも、来年3月でいったん営業を休止するそうだ。新しくなると、レトロな雰囲気も様変わりするのだろう。私は、工事の前にもう一度泊まりに行くことにしている。本当は、建替え前の丸ノ内ホテルにも行ってみたかった。前を通りすぎた思い出しかなくて。丸ノ内ホテルのサンドイッチが、『斜陽』に出てくるから。

谷川俊太郎さんがマイクを持って歌うのを初めて聴いた。なかなか上手だなぁと思ったら、「もしかして、自分がうまいと思ってない?」と息子の賢作さん。俊太郎さんが「最近うまくなってきたような気がする」と笑うと、会場から拍手。照れていたみたい。

賢作さんの演奏もとてもよかった。一番心に残ったのが、俊太郎さんの「宿題」という詩に乗せた曲。賢作さんは、美しいメロディーに仕上げていて、小室さんが、「谷川賢作の中にイノセントを見たね、美しい」と誉めていた。これは、『二十億光年の孤独』に所収されている、俊太郎さんが18歳の時に書いた詩。とても良い詩なので、ご紹介。

目をつぶっていると 神様が見えた
うす目をあいたら 神様は見えなくなった
はっきりと目をあいて 神様は見えるか見えないか それが宿題

今、谷川俊太郎さんがプロデュースして、小室さんと賢作さんがアルバムを作っているそうだ。その中の曲も演奏してくれた。私は小室さんが大好きなので、雑音の中での演奏で、小室さんの魅力がちゃんと皆に伝わったかな、というのがちょっと気になった。だから、隣の席にいた夫婦が、「小室さんの歌、うまいねぇ」と話していたのを聞いて、とても嬉しかった。

コンサートが終わり、幼い子供が、さりげない花束を俊太郎さんに渡して、とても気が利いていていいなと思った。ああいう時って、大人がノッシノッシ出て行って渡すよりも、子供がササッと行く方が、爽やかだなぁと思う。無料コンサートなので、何か持ってくれば良かったな・・と思っていたので、彼女が花束を渡してくれて、うれしかった。

コンサートの後、小室さんがいろいろな人と話していたので、私も近くまで行ってみた。あぁ、という表情をしてくれて、覚えていてくれたみたいで、うれしかった。私はホント、小室さんのあたたかい笑顔が大好き。この三人の組み合わせのコンサートがあれば、また行きたいなぁと思う。