「あたりまえの政治を取りもどす」1.30市民連合シンポジウム(日暮里サニーホール)

シンポジスト:前川喜平 (元文部科学省事務次官) 、望月衣塑子 (東京新聞記者) 、寺脇研京都造形大学教授)
コーディネーター:山口二郎 (法政大学教授)

参加申込み不要と聞いていて、18時過ぎに日暮里駅に着くと、駅前にシンポジウムのポスターを掲げて、「満席です、入れません」と伝える人がいた。おそらく多くの人がそれを聞いて帰宅したと思うが、私はとりあえず会場まで行くことにして、正解だった。会場に入れなかった多数の聴衆が、ロビーで講演を聞くことができて、また最後15分程、空席になったところに私は入ることができて(声をかけて頂いた)、初めてパネリストの皆さんの姿を生で見ることができた。お話を聞けたことも収穫だったが、生の姿を見られたことは、深く印象づけられた。以下、メモを取った内容から、箇条書き。

・前川:今の政治は「権力の腐敗」「権力の暴走」である。暴走というのも、過去に向かって逆走している。公正、公平、透明の反対。不公正、不公平、不透明な政治。加計学園の経緯。教育が(個人を型にはめ込む)集団主義化している。その集団主義が、最終的には国家主義に向かい、そこで止まる。その先の地球、世界、人類という方向には向かわない。
・望月:もともとは事件記者をしていた。武器輸出についての取材も。その後、官邸会見に臨んだ。長期勾留中の籠池夫妻のこと。伊藤詩織さんのこと。「希望が失望に変わり」、政権交代を成し得なかった。憲法改正への危惧、9条3項のこと、武器輸出禁止三原則からの逸脱、軍拡への道程。対北朝鮮は、少しでも対話の道をひらくことが最も大切。絶対に戦争にならないための行動を。
・寺脇:日本会議の思想に基づく道徳教科書が、4月から公立校の8%で使用開始。ここ15〜20年の政治をみていると現在の政治にそれ程驚かないが、戦後70年間、全く起こらなかったことが今起こっている。かつては、マスメディアや政治組織の中で不正が正されてきたが、現在は不正が正されない。江戸時代よりも酷いのでは。
<質問:なぜこんなことになったのか?>
前川:政治と官僚のバランスが崩れた。政権に人事権を握られていること。官僚には3つのタイプがいる。(1)世のため人のために尽くしたい、(2)定年まで安穏と暮らしたい、(3)権力に近づきたい。自分にはいずれもあった。(3)については、出世しないと仕事ができないと考えたことから、面従腹背と言った。今はボスもいないので、面従腹背は過去。現在の座右の銘を聞かれ、「眼横鼻直(がんのうびちょく)」と答えた。目は横について、鼻は縦についている意。つまり、「当たり前のことを当たり前にみて、当たり前に受けとめること」。なぜこのような状況になったのか、やっぱりよく分からないが、日本人の個が弱いのではないか。長いものには巻かれろ、寄らば大樹の陰、というように。個を強くするような教育が必要。
寺脇:人事権を握られた官僚が、政策に反対すれば辞めさせられるので、何も言えなくなる。権力にすり寄れば出世させるというのが今の状況。非常に問題。
望月:多様性を認めない空気。ノーベル平和賞ICANに面会しない。生活保護費の削減、共存共助をなくす方向へ。社会の根底が覆されている危機感。インパール作戦のようだ。
<質問:今年、何をしていくか>
望月:官邸では、孤立していても、外では多くの支援者がいる。多くの応援メールも支え。東京新聞では、望月の質問を止めさせれば、それが問題になるとの認識、社の上層部も理解。このままでは日本が危険な国家になっていく。
寺脇:メディアの報道だけ見ていても、よく分からない。若い人に危機感が足りない。若い人に伝えていくこと。ミニコミを少しでもやること。
前川:”こんなもの”を出されたときに、こんなものを食べるか、と国民が言わなければならない。食べたことが無いので食べてみようと若い世代が言うのではないかと、非常に心配している。個別的自衛権集団的自衛権の違いを理解していない人も多い。 一人一人に語りかけていくこと。 知らない人に教えてあげること、憲法の理解。憲法改正の発議までに間に合うかどうか…。認識を高める努力を、若い人たちに対して、やるべきだ。